桃花村「影からの客」を観て

 野外。夜。茶色で覆われた舞台。バックで流れるアコーディオンのメロディ
もどこかもの悲しい響き。
 「ゴヤ」と聞くと、それだけで暗いイメージが先行し、皮肉たっぷりのどろど
ろした人間の醜さをどんなふうに見せられるのかと見る前は身構えていました。
ところが、そのメロディに耳が慣れてくる頃、泯さんの静かな動きを見ていたら、
自然に自分の体がそのメロディにノッて、心も体もなんとなくほぐれていきまし
た。
 死んだ本モノのニワトリを首に巻き付けたり、痙攣しているような動きをしてみ
たり、といった目を背けたくなるような場面も、なぜか吸い込まれるように見入っ
てしまい、不快と感じながらも、なおもっと見たくなってしまうのでした。
 激しくぎったんばったん揺れる鉄イタのシーソーの上を歩く場面では、全く軽や
かに運ばれるその演者の足取りに、何というバランス感覚!かと爆発的な感動を覚
えました。

 それは、鍛えぬかれ、研ぎ澄まされた肉体から発せられるエネルギーに打ちのめ
されるという心地よさだったように思います。そんな爽快感を味わい、見終わった
後のあのすがすがしさは何ともいえないものでした。

 さて、主題の「ゴヤ」との関係を私の中でつないでみると、やはりゴヤのぎりぎ
りまで研ぎ澄まされた感覚で描いた人間の醜さをさらけ出した絵を見たときの、心
のどこかで感じる痛快さと似ているでしょうか・・・?

 なんて、実はそんなこじつけよりも、舞台、演者、場の空気、自然とのつながり
からいただいたパワーへの喜び、感謝の方が圧倒的に大きな私でした。

ありがとうございました。

     2002.10.1       静岡県焼津市  小石 富美江 記


   *桃花村舞踏公演「影からの客」は2002年914日コンテンポラリーダンスウィーク

の初日に樂土ノの特設野外舞台で開催されました。